嘲る女

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  「彩芽……?」 不意に身を寄せてきた彩芽に、大石が狼狽える。 しかし、彩芽はそのまま静かに口を開いた。 「ねえ、私達……このまま死んじゃうのかな」 悲痛な声だった。 感情を押し殺して、絞り出すようにつぶやく。 そんな、悲しい声だった。 「大丈夫だよ、きっと」 そんな答えを返したところで、誰の気持ちも晴れないことは知っている。 しかし、そう答えるより他に仕方がなかった。 この現状を打破するすべなど、何も持ってはいないのだから。
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