嘲る女

4/30
前へ
/30ページ
次へ
  「ねえ、準……」 彩芽が、準の腕をギュッとつかみ、懇願するような瞳を向ける。 その表情は、いつものサバサバしたものとは異なり、酷く弱々しく見えた。 「どうしたんだよ、彩芽」 そんな彩芽をなだめるように、大石が優しく語りかける。 しかし、次に彩芽から放たれた言葉は、そんな大石の冷静さを奪い去るに十分だった。 「……ねえ、私を抱いて」 「……えっ?」 一瞬、何を言っているのか分からなかった。 思わず、その瞳を見つめ返す。 冗談を言っているようには見えなかった。
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!

28人が本棚に入れています
本棚に追加