嘲る女

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  「準が東京に行く前にさ、告白したじゃん? その時は断られたけど……今は、どうかな?」 じっと見つめてくる彩芽に、大石は黙り込む。 きっと、怖いのだろう。 いつ死んでもおかしくない状況で、すがる絆がほしいのだ。 寄り添い、助け合っていくのに、友人という関係では不安なのだろう。 もしくは、単純に自分のことをまだ好きだったのか。 どちらかはわからなかったが、今の大石には答えることができなかったから。 なぜなら、自分に告白したまま命を落としてしまった人間の存在が脳裏にちらつくから…… その瞬間、大石の瞳が、窓の外の光景に釘付けになる。 ――誰かが、近づいてくるのだ。 服装は、眞砂子と呼ばれた少女と同じ白いワンピース。 しかし、首が折れているわけではない。 だが、大石が大いに震え上がるのも無理はない。 なぜならその姿は、死んだはずの詩織そのものだったのだから――。
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