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「うわあああああ!」
瞬時に立ち上がり、駆け抜ける。
あの少女のいた場所からは、そこそこ距離がある。
このまま走れば逃げ切れるかもしれない。
少女のゆったりとした足音が、しかし荒井と一定の距離を保って聞こえてくる。
振り向けない。振り向いてはいけない。
瞳を閉じて、無心で走る。
やがて、耳に聞こえてくるのは酔った人々の騒ぎ声。
もうすぐ。もうすぐ人のいるところへ辿り着く。
生きて妻子に会える。
もうすぐ、もうす……
――その瞬間、荒井の腕が掴まれ後方へと引かれた。
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