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――下!? 下にいる!?
荒井の背筋が凍りつく。
だが、今ここで上へと引き返しても追い詰められてしまうだけだ。
ならば、駆け抜けるしかない。
あの少女に追いつかれる前に、一心不乱にさらに下へと駆け抜けるのだ。
エレベーターの音がした階を、思いっきり駆け降りる。
その時、彼は見てしまった。
エレベーターのドアの隙間からこちらを眺めて微笑んでいる少女の姿を。
「うわあああああああああ!」
腹の底から絶叫する。
やだ、捕まりたくない。死ぬわけにはいかない。
愛する妻がいる。まだ小さな子供がいる。
こんな所で、死ぬわけにはいかないのだ!
半狂乱で下を目指す。
しかし、軽快なエレベーターの停止音は、また階下から聞こえた。
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