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「笹見さんはああ言ってくれたけど、俺はやっぱり汚い人間になったんだと思うよ。君を探すなんて言いながら、詩織の告白に揺れて、彩芽を抱いた。俺の中に愛があったのかも分からない。劣等感や寂しさを癒やしてくれる女性なら誰でも良かったんだろうとも思う」
大石が、泣きじゃくりながら言う。
笹見が何か言おうとするも、首を絞められた影響でむせかえってしまい、言葉にならない。
眞砂子の母親は、冷たい笑みを貼り付けたまま、ゆっくりと近付いてくる。
もはや、恐怖はない。
死を認めてしまえば、何も恐れるものなどないのだ。
「もう遅いかもしれない。怒りは治まらないかもしれない。でも、これだけは言わせてくれ」
大石が涙を飲み込んで、ゆっくりと口を開いた。
「忘れたこともあった、恐れたこともあった、だけど……君との思い出は今でも一番大事なものだ。あの時、僕と遊んでくれてありがとう!」
大石が叫ぶ。その首筋に、冷たい手が絡みついた。
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