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「ねえ、大石くん」
眞佐子が逃げながら、大石に話しかける。
お互いに名前は名乗っていなかったはずだが、そんなことに意識を向ける余裕は彼にはなかった。
「私ね、ずっと見てたんだ。大石くんのこと」
彼女が曲がった首のままで微笑む。
大石は何も答えず、笑顔を返す。
少女はまだ捕まらない。
「今になってからやっと気付いたの。あのとき、私は大石くんが好きだったのかなって」
「僕もだよ」
大石が伸ばした手が、空をつかむ。
車の下から、少女のからかうような笑顔が覗いた。
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