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「う、嘘じゃない! 僕は……」
「私のことなんか、忘れてたじゃない!」
少女の声が夜の闇を切り裂くように爆発した。
大石の周りの地面がぐにゃりと揺れる。
思わず倒れこんだ彼の腕をつかむ、青白い、手。
髪の毛を掴む、手。
足を、腰を、首を、腹を、掴んで押さえつける無数の手。
その全てから、彼に対する未曾有の悪意が滲みだしていた。
「お前が裏切ったからいけないんだ」
不意に、背後から男の声がする。
その声は、最後の路上ライブの時に声をかけてきた男の声――。
即ち、眞砂子の父親の声だった。
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