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「あ、ああ……!」
眞砂子の父親が、膝をつく。
その腹からは真っ赤な血が流れ出していた。
「いつまでもいつまでも過去に引っ張られてるんじゃねえぞ。クソが」
笹見が吐き捨てるように言う。その銃口は、寸分の狂いもなく眞砂子の父親に向けられていた。
「お前には、この二人を説得することもできたはずだろ。でも、それをしなかったのはお前が過去に縛られて復讐しか考えてなかったからだ。お前が、二人を利用してたんだ。大石にも人生がある。いつまでも死んだ女に縛られていられないんだよ」
「だったら……娘はどうなるんだ! こいつのせいで、こいつのせいで娘は……」
「責任転嫁すんじゃねえ!」
笹見の怒鳴り声が静寂の闇に響く。
「お前らの娘が死んだのは大石のせいじゃねえよ。確かに窓から顔を出した理由は大石にあるかもしれない。だがその時、娘の側にいたのは誰だ? その行動を諌めたり止めたりすることができたのは誰だ? 遠くにいた大石にできなかったことがお前達にはできた。しかし、それをしなかった。分かるか?」
「やめろ! やめろおお!」
眞砂子の父親が、叫び声を上げる。
しかし笹見は、構わずに言葉をつづけた。
「お前らは逃げていたんだ! 自分の責任で娘が死んだことを認めたくなくてあがいてただけだ! 人のせいにして、他人を逆恨みして、こんな惨劇を引き起こした! お前は最低な犯罪者だ!」
「あああああああああああああああああ!」
眞砂子の父親が、おびただしい量の血を吐いて倒れこむ。
それから彼が起き上がることは一度もなかった。
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