最後の鬼ごっこ

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ぐりんっと、眞砂子の母親が大石に向かって振り返った。 殺しかけていた笹見を放り投げ、ゆっくりと大石に向かって歩く。 その表情は、変わらず狂った笑顔のままだった。 「ごめんね……眞砂子ちゃん。俺、結局約束を守れなかったね」 大石が涙ながらにつぶやく。 ゆっくりと向かってくる眞砂子の母親に対する恐怖も、今はあまり感じなかった。 「この島を出てからの俺は、自分のことばかり考えてた。他人と比べて勝ってるとか劣ってるとか、そんなことばかり考えてた。他人の方が先に進めば、悔しくて妬ましくて、気が狂いそうになってた」 大石が、自らの人生を反芻するように、言葉を紡ぎ出していく。 それは遺言のようであり、走馬灯のようでもあった。 「でも、急にこんな人生が馬鹿らしくなって。その理由は分からなかったけど、この島に来てすぐに分かったんだ。君との鬼ごっこが恋しくなったんだって。一度も勝てなかった、悔しかった、でもそれでも必ず清々しい思いで手を振ることができた。嫉妬したり妬んだり、そんな今の自分が醜く思えるほどに、あの時の君との鬼ごっこは純粋だったんだ」 いつの間にか、大石の瞳からは涙が溢れ出していた。
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