雪が降るその日に

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****************  レンガ造りの家々は、日の光を浴びていれば何処か温かみを感じさせる。    人々で賑わい、多くの店や高い建物、歩けば欲しい物が直ぐに手に入る発展した町からは少し離れた場所にある、小さな町。  休日の人々の過ごし方は、もっぱら公園や図書館などの公共施設の使用であり、その時を家族や友人と共に過ごす。  背の高い木々が、綺麗に建ち並ぶ家と家の間にバランスよく植えられており、町全体に穏やかな雰囲気が流れていた。  多くを望むものは離れていき、多くを望まない者は子供達の遊び声と共に平和に暮らす。  そんな町である。  しかしながら、小さい故に改善される事の無い問題もある。  焦げ茶色の短い髪の女性――明子は、暖炉の火で辛うじて暖められている病室の窓から外を眺めていた。 「ああ、お酒が飲みたい……。」 「こら、何言ってるの?」  ぽつりと、儚げに出されたその言葉に対し、明子がいるベットの横で椅子に座っていた女性が素早くつっこむ。  光の当たり方によっては、桜色の様にも桃色の様にも見える綺麗なロングヘアの20代ぐらいの女性――瑠花に、明子は笑顔を向けた。
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