いつかの雨

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「時間」 置いてきぼりにされるほど傷は消えていくもの そんなものは元々なかったんだ ないものに憂いを買っても無駄遣いでしかない ぶつかった肩に傷痕はできない 通行人たちの顔はみんな真っ黒で見えない 顔を俯けるなんて勿体ないよね? 長くなっていた前髪をうえでまとめあげて 明るい景色を堪能してみようよ 足並みを揃えなかった私が悪いと皆は言う 言われなかったときよりはマシだよね 何も知らされないままでいたなら 何も知ることができないでいたのだから 世界はとても広いと人は言う 世界はとても狭いと私は言う 視野が狭いと私に言う 視野が狭いよねと言い返す どうせ傷などつかないのだから 「君はかわいそうだね」と誰かが呟いていた そんなことを言う君がかわいそうだ 君の当たり前を私に当てはめないで欲しい 私の当たり前は誰とも違うのだから それを君も当たり前にしてしまえばいい そんな当たり前のことを言わせないで のびきっていた前髪を一線と切り離して いつかの感情も一緒に床に散らばった 歩く幅を不規則に変えて疲れてしまった だけどそれが 私のアイデンティティー 自分らしく歩いていたはずなのに 自分らしさに気付いていなかった
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