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 ランドール家が宿泊していたのは皇居に近い外資系ホテルだった。フロント係は危険だから、外出しないように注意したという。テロが発生したばかりで、みな平常心を失っている。日本語が達者な社長はていねいに断った。 「今夜の食事は予約をとるのが難しい日乃元料理の名店なんです。3ヵ月も前から楽しみにしていました。子どもたちにもこの国の文化の精髄(せいずい)を味あわせてあげたい。日乃元の国民はみな優しい人ばかりだから、だいじょうぶ。心配ありません」  夕食を終えたランドール家はホテルに帰る途中30人を超える殺気立った群衆にとり囲まれた。  おまえら、どこからきた?   ダリルは必死にごまかしたが、恐怖のあまり妻のエドナがラルク公国の名を漏らしてしまった。人々は凶器を手にランドール家の5人に襲いかかった。頭蓋骨(ずかいこつ)骨折と全身挫傷(ざしょう)。一家は全員惨殺され、ホテルからほど近い繁華街の路地裏にぼろ布のように放置された。
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