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「ランドールさんの事件は忘れられない。ぼくがそばにいたら、なにをしても止めていた。襲撃された外国人に対しては、どの国の出身であるか関係なく申し訳なく思う」  しばらく返事がなかった。タツオは上段のマットレスを支える木組みを見あげていた。ジョージの声は痛々しい。 「今回のことで、自分が完全には日乃元の皇民じゃないのかもしれないと思った。やはりぼくには父のエウロペの血が流れているんだろうな。いつもは優しい日乃元の人たちの怖さを思い知らされた。あれが進駐軍なら、冷静に事態に対処したはずだ。でも、一般の人々は違う。あの襲撃犯だけじゃない。年寄りの政治家や無責任な週刊誌は、すぐにラルク公国に宣戦布告しろと、勇ましいことばかり叫んでいる」  女皇の一滴の血は、敵国100万人の流血であがなえ。警護にあたっていた者は、テロリストを根絶するまで日乃元の土を踏むな。メディアの論調は激しいものばかりだった。
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