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 羅子(らこ)女皇により発せられた戒厳令は3日間で解除された。日乃元(ひのもと)皇国内で続発した襲撃事件により多数の外国人が死傷したため、被害を受けた各国から非難が集中した。日乃元のメディアも非難に非難で応酬する。外国との貿易活動や文化交流も一時的にストップし、日乃元皇国は孤立状態にあった。  東島(とうとう)進駐官養成高校の内部も重苦しい雰囲気につつまれていた。自由時間にテレビをつけると、どのチャンネルでも女皇を狙ったテロ事件とその後の外国人襲撃であふれている。街角には自分たちとさして年齢の変わらない若い進駐官が、自動小銃を肩にさげて立っていた。銃口が向けられているのは、植民地を奪い合う外国軍ではなく、日乃元の国民である。タツオの気もちは複雑だった。このまま養成高校を卒業して進駐官になれば、命令に従い、この仕事にも就(つ)かなければならないのだ。それがほんとうに進駐官の本分なのだろうか。
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