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「レディファーストで璃帆から覗いてごらんよ」
「……まぁ、いっか」
私は旧式の天体望遠鏡を覗き込む。
久し振りに覗いたそこには、とても美しい光景が広がっていた。
「はぁ……やっぱりすごい……。すごい綺麗だよ……」
お爺ちゃんと見た時の事は鮮明には思い出せなくて、そこから見えた星空の映像もほとんど記憶には残っていなかったが、こうして改めてそれを覗き込むと、その美しさは計り知れない。
それほど倍率を上げられない古い天体望遠鏡でも、夜空の星の美しさを知るには十分過ぎる。
「ほら、奏樹も見てみなよ」
「それじゃあお言葉に甘えて」
望遠鏡を覗き込んだ彼の真剣な面持ちが、何度も私の心をキュンキュンと締め付ける。
長年感じる事のなかった恋という感触、手触りを思い出して、小学校の頃に戻ったような気分だ。
「これは綺麗だね。やっぱり暮らしの明かりが少ない場所は星がよく見える」
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