1人が本棚に入れています
本棚に追加
彼は丘に来ていた。
もうこの村には誰も居ない。
自分一人だけ。
嗚呼、なんて、なんて楽しい【喜劇】なのだろう。
「君達からしたら、【悲劇】だろうけれど」
彼は笑う、嗤う、哂う。
楽しそうに、愉しそうに。
けれど、哀しそうに。
「俺の名前はなんだったかな…。
もう、忘れてしまったなぁ…。
随分呼ばれていなかったからなぁ……。」
彼は思う。
「自分で自分の名を付けるなんて……。
なんて滑稽な話だろう」
笑う、嗤う、哂う。
「そうだ、そうしよう。
俺は人間をやめる。
でも俺は死んでいない。
俺は神でもない。
死神でもない。
俺の存在は、【無】だ。
生きているけど死んでいる。
そんな、名前……。」
「俺の名前は……【死期尊命】」
最初のコメントを投稿しよう!