死期尊命”過去”

4/7
前へ
/19ページ
次へ
【ある日】この日もいつもの様に村人が彼に食事を運んできた。 恐怖に染まった顔で、彼の傍に食事を置き、立ち去ろうとしたとき、 今まで声を発したことのない彼が、 唐突に話しかけた。 「ねぇ…」 「っ!?」 村のは驚いた。 初めて、彼が声を発し、自分に話しかけたのだから。 「僕は…どうして此処に居なければいけないの…?」 「そ、それは……」 彼は、村人を見つめた。 紅い紅い子供らしく大きな瞳で。 「僕の眼が見えないから…?僕の耳が聴こえないから……?」 彼にの澄んだ冷たい声に、恐れて、声も出ないのか、 村人は静かにコクリ、と頷いた。 「そっか……。でも…僕には…解らない…。 僕は、何もしていない。僕は、悪くない。 なのに、なんで? 僕はこうして話せるのに。 僕はこうして君の顔も見えるのに。」 「!!」 村人はここでようやく気付いた。 彼は眼も耳も不自由で使えない。 なのに、こうして話している。 自分が先程頷いたのも、彼には見えている? 耳の不自由な人間は、話すことすら出来ない筈なのに。 見えない筈 視えない筈 聞こえない筈 聴こえない筈 解らない筈 判らない筈 なのに なのに 何故?
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加