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【ある日】この日もいつもの様に村人が彼に食事を運んできた。
恐怖に染まった顔で、彼の傍に食事を置き、立ち去ろうとしたとき、
今まで声を発したことのない彼が、
唐突に話しかけた。
「ねぇ…」
「っ!?」
村のは驚いた。
初めて、彼が声を発し、自分に話しかけたのだから。
「僕は…どうして此処に居なければいけないの…?」
「そ、それは……」
彼は、村人を見つめた。
紅い紅い子供らしく大きな瞳で。
「僕の眼が見えないから…?僕の耳が聴こえないから……?」
彼にの澄んだ冷たい声に、恐れて、声も出ないのか、
村人は静かにコクリ、と頷いた。
「そっか……。でも…僕には…解らない…。
僕は、何もしていない。僕は、悪くない。
なのに、なんで?
僕はこうして話せるのに。
僕はこうして君の顔も見えるのに。」
「!!」
村人はここでようやく気付いた。
彼は眼も耳も不自由で使えない。
なのに、こうして話している。
自分が先程頷いたのも、彼には見えている?
耳の不自由な人間は、話すことすら出来ない筈なのに。
見えない筈 視えない筈
聞こえない筈 聴こえない筈
解らない筈 判らない筈
なのに なのに
何故?
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