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「僕はね…すべてが見えない訳じゃ無いんだ。
すべてが聴こえない訳じゃ無いんだ。
僕は…僕はね…。
こうして何年も何年も此処に閉じ込められた。
苦しかった…。
寒いし、冷たいし、真っ暗だし…。」
彼はフラリと立ち上がった。
そしてゆっくりと村人に近付いていく。
どこから持って来たのか、錆びれた斧を片手に。
「誰かに、助けてほしかったんだ…。
誰かに、愛してほしかったんだ…。
でも、誰も助けてくれない。愛してくれない。
此処にずっと居るのはもう懲り懲りだ。
でも君達は僕を出してはくれないんでしょう?」
村人は危険だと思い、開いている扉の方へと走った。
だが…。
開いていた扉が突然閉まった。
風も起きていないというのに。
何故?何故?
「逃がさない。」
村人が振り返ると、彼はすぐ傍にいた。
紅い紅い子供らしく大きい瞳が此方を睨む。
紅い紅い子供らしく大きい瞳が、紅黒く染まっていく。
まるで鮮血が、気味の悪い血へと色を変えていく様に。
「君たちは、【俺】を甘く見ているんだよ。
障害者だからって、何も出来ないと思ったの?
教えてあげるよ。
【俺】を苦しめると、どうなるのかを、さ。
【俺】は見えないんじゃない。
聴こえないんじゃない。
見ないだけ、聴かないだけ。
【俺】はね?
【殺したい】と思う人間しか見えなくて、ソイツの言ってる事しか聴こえないんだ。
気味が悪い?恐い?命乞いでもする?
何とでも思うと良いさ。
全部無駄だけどね。
君は、君の物語は、此処で終わり、だよ。
どう?
最高の【悲劇】になった?」
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