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あまりにも優しく風が吹いた。
じわじわと汗の滲んだ学生シャツを着ている身には少し、冷たい。
それなのに、心の奥からゆっくりとこみ上げてくる衝動が身体を焼いて行くような感覚がする。
二つの温度に、女は思わず両腕で自分の身体をかき抱いた。
くらりと目眩がしそうだった。
濃い甘い、ひとときの命が放つ生を凝縮したような匂い、媚態。
ますます、ぎゅうっと体温は私にあるのか、と確かめるように抱きしめた。
「どうしたの、大丈夫?」
ハッとした。
慌てて顔を上げると男が心配そうに女を見つめていた。
視線が絡み合う、目の奥に熾火のように燻っている想いにふと、気づいてしまう。
女は急にどぎまぎしてしまう。
身体を冷やした花の息吹が男の想いに退いて行く。
クラクラとした。
もう、それは花のせいではなかった。
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