吹き上げる風

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"不安なんだ" 彼はそう言って、力なく微笑もうとして、少し頬がこわばった。 何に対しての不安なのかは言わなかったが、聞く気にもなれなかった。 漠然とした不安なのは察知できたし この年頃は不安を抱くもんだよ、と言ったことのある私も同んなじ怖さを感じていると知られたくなかった。 長い針がもうすぐ12時を跨ごうとしていた。 淡く白っぽさをまぶしたような空がファンタジーとしか思いようのない雲を浮かべている。
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