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テーブルの下で、牟田君の頬をひっぱたいてやりたい衝動に駆られている右手を、左手で一生懸命に押さえつけていると、女将さんが牟田君の赤霧ロックの入ったグラスを、近くのカウンター席に置いた。
「もぅ!修ちゃんは、あっちで飲みなさい!」
「は?訳分かんねーんだけど?」
「アンタ、女に何言ってんの?失礼なのよ!」
「チッ。わぁったよ!オレだってな、人をホモ呼ばわりする失礼極まりない女と、クドクドうっせーオカマに囲まれて、酒なんか飲みたかねーよ!」
牟田君は『こっちから願い下げだ!』と捨て台詞を吐いて、ほっけの開きが乗った皿を持ってカウンター席に移動した。
チビチビとほっけをつつく牟田君の背中は、あからさまに不貞腐れた様子を物語っていた。
あたしの前に座った女将さんは、その背中を睨みつけた後、あたしの顔を見た。
「ね?言った通りでしょ?
所詮、顔だけの嫌な子なのよ!」
「おい!聞こえてんぞ!」
女将さんは横槍を入れた牟田君の背中を再び睨みつけていた。
だけど、牟田君が難アリである事よりも、もっと気になる事が...。
「それより女将さんってオカマなんですか?」
「...梓ちゃん。あなた、本当にストレートね」
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