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牟田君はカウンター席から立ち上がり、再びあたしの向かいに座った。
そして、話す前から笑いが堪え切れない様子を見せた。
・・・そんなに面白い名前なのか?
「....ゴン...ククッ、ダイ ...クッ、ゲンジロ...ゥアッハハ」
「は?何言ってんのかわかんない!」
何が可笑しいのか全然分からないけど、とにかく牟田君のツボではあるようで、少しの間独りで爆笑していた。
途中で眼鏡を外して、涙ぐんだ目を指先で拭っていたほどだ。
・・・牟田君は眼鏡しない方が、なんとなく取っ付き易い感じがしていいな。
眼鏡掛けてると、優等生過ぎるというか、気難しい感じがする。
そんな事を思っていると、牟田君はなんとか笑いを堪えて、テーブルの上に右手の人差し指を出した。
その指先は話と連動して字を書き始めた。
「ゴンダイってのが名字で、権力の....権に、代表の....代。んで....」
牟田君はそう話しながら、テーブルに視線を落として字を書いていたけど、あたしの耳はそれを殆ど聞いてなくて、目だけがその指先を追っていた。
・・・やっぱり、男らしい指だなぁ。
でも、字を綴る人差し指の爪の下に、小さな小さなホクロがあって、男臭さを感じる指にミスマッチなのに、何故かソレが妙に可愛く思えてしまった。
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