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・・・それなのに、神様はなんて意地悪なんだろう。
仕事が終わり、エレベーターが上がって来るのを待っていた時、『よ!』と少し懐かしい声がした。
振り返らなくても分かったけど、振り返ると、やっぱり牟田君だった。
倒れた時とは全然違う元気な様子だったので、改めてホッとした。
だけど、やっぱり気まずさから胸が異様にドキドキした。
・・・急に出会すのは心臓に悪い。事前の心の準備がまだまだ必要だ。
「…お疲れ様。....牟田君も今帰り?」
「いーや。まだかかりそうだから気分転換。…コンビニ行ってくる」
「そっかぁ。でも、あんまり無理しちゃダメだよ。....また倒れるよ?」
「…わーってるって!....つーか、あん時はごめん」
牟田君は、珍しくしおらしい様子を見せた。
これは相当懲りて、素直に反省してるっぽい。
「あたしは何もしてないし、気にしないで。
でも元気そうで、ほんとよかった…」
「ああ、おかげさまで」
静かに微笑む牟田君を見て、ドキドキしっ放しの心臓がギュッと締め付けられた。
そして、エレベーターが止まり、牟田君が1歩乗り込むのを見てから、あたしは・・・、
逃げた!!
2人きりでエレベーターの密室なんて無理っ!
「…じゃ、じゃあ、お疲れさまーっ!」
「ぇ?あ…ちょ、おい!」
牟田君の慌てる声が聞こえたけど、近くの非常階段まで走った。
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