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香川さんは、一年半ほど前に別の大学病院から異動してきた看護師さん。
以前いた病院では循環器外科病棟に所属していたらしく、心臓疾患において知識と共に経験豊富なナース。
若手の医者が見逃していた不整脈を瞬時に見つけ出すなど、心電図の解読力はドクター並み。
だからと言ってその実績を鼻にかける事は無く、いたって謙虚で嫌味を感じさせない人柄の良さ。
頭脳ヨシ!器量ヨシ!容姿ヨシ!
「そうそう、さっき小早川先生がまたくだらない事で安藤さんに文句言ってたけど、気にしなくて良いからね。何か一つ言いたいだけの、捻くれた中年オヤジだから」
満員電車のつり革に手を伸ばしながら、香川さんがニヤリと悪戯気な笑みを浮かべて見せた。
おまけに性格もヨシ!
私の目に映る彼女は、まさにスーパーガールだ。
そして、「クラークさん」でもなく「事務員さん」でもなく「事務の人」でもなく、常に私を「安藤さん」と名前で呼んでくれる気さくな彼女に、以前から親しみを感じている。
「ありがとうございます。大丈夫です。慣れてますから」
香川さんが放つ柔らかな空気に触れながら、私は素直な笑みを返した。
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