第2話 【花の命は短くて】

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「来月13日の夜、安藤さん何か予定がある?金曜日だけど」 たわいない病院話が途切れた後、香川さんが私に問いかけた。 「え?…平日の夜は特に予定ありませんけど…どうしてですか?」 私の目の前に座っている、スマホを弄る男子学生から視線を外し首を傾げた。 「病棟の忘年会があるんだけど、よかったらどう?」 「はぁ…忘年会ですか。確かに、もうそんなシーズンですね」 院内の飲み会は、飲み代込で会費五千円が相場。年中金欠状態の私は気乗りしないどころか、この三年間で参加したのは一回だけだと記憶している。 香川さんからのせっかくのお誘いではあるが、思わず返事を躊躇った。 「私、今回の幹事なんだ。安藤さんと一緒に飲んだことないし、ぜひ来て欲しいの」 「香川さんが幹事ですか…」 「そうなの。一緒に飲もうよ~。予定がないなら来て来て」 私の顔を見つめながら、香川さんが可愛らしく「ねっ?」とお願いポーズを見せる。 五千円か…飲み代で一週間分の食費はキツイ。 彼女の笑顔を目の前にしながら苦笑いを浮かべる。 …あっ!でも、13日ならボーナスが出た後か…
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