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「…13日ですね。予定空けておきます。お誘いありがとうございます」
ピンクの花が咲いたような笑顔に半ば押され気味の私は、はにかんだ言葉を返した。
「来てくれる?良かった~!七瀬さんも誘うつもりなんだけど、安藤さんが来てくれるなら彼女もOKかな?」
「どうでしょう…七瀬さんは派遣会社からのクラークなので、派遣先での飲み会は禁止されてるみたいですけど」
「え?そうなの?」
「規則では、一応そうなってるみたいですよ」
「そうなんだ…知らなかった。せっかく安藤さんが来てくれるから、彼女も一緒にって思ったのに。誘っても駄目か、残念」
停車駅の手前で、ブレーキをかけ始めた電車が大きく揺れた。一瞬よろめきかけた香川さんは、体勢を立て直し、ため息と共に声を落とした。
「…私からも誘ってみますね。それでどうこうなる大事じゃ無いでしょうし、来るか来ないか判断するのは彼女ですから」
彼女の横顔に柔らかな笑みを送る。
「ホント!?ありがと~!宴会の日にちね、平日だと忙しくて遅刻者続出だから土曜日にしようかって案もあったんだけど、土曜日ってみんなそれぞれ予定があるでしょ?だから金曜にしたの。安藤さんも平日しか空いてないのね。週末はデートかな?」
ふふふと緩んだ笑みを浮かべ、からかい混じりに私の顔を覗き込む。
「いえ、彼氏いない歴4年に片足突っ込んでます」と、自虐的な返答をする訳にもいかず。
「…はい、そんなところです」
虚しさを笑顔でコーティングし、新瑞橋駅のホームに入る車輪の音に耳を傾けていた。
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