第2話 【花の命は短くて】

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愛知県名古屋市にある、名聖医大第一付属病院。ここが、現在私の所属する病院。 例の痛すぎる事件の後、例の恐ろしい妻の監視から逃げるように、三年前にお隣の三重県からこの地に移住した。 白の長袖ブラウスに、グレーのベストと膝丈のタイトスカート。首元には薄いピンクの花柄スカーフ。 この、いかにも事務員の匂いがプンプンとする制服が、私の戦闘ユニフォームだ。 私の職種は、世間一般で言う医療事務員。 しかし、私は「事務員」という呼び方が好きではない。 昔見たドラマの影響なのか、事務員と聞くと、紺色の制服がはちきれんばかりの小太りのオバちゃんが、お茶配りをしている姿をイメージしてしまうから。 私達は、自分達を「クラーク(事務員)」と呼ぶ。 医療事務員の仕事と聞くと、病院の窓口や各部署での患者の案内、窓口会計が主だと思われがちだが、それだけではない。
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