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「さて」と、シャギーが一頻り笑い終えた照子に目を向けた。
「悪いんだが、少し玄関の外で待っていてくれないか? 僕はこの糸こんにゃく製造機と、男同士の話がある」
「誰が糸こんにゃく製造機だコラ」
「わかりました」
照子はシャギーの頼みを聞き入れ、玄関の外へと姿を消した。それを確認してから、シャギーは大介と向き合う形で腰を下ろす。その間にも糸こんにゃくはどばどばと両耳から溢れ出しており、既に部屋の三分の一ほどを埋め尽くしていた。
「大介君。真面目な話をしようか。しようよ。しようしよう」
「このシュールな状況で真面目な話ができるとでも?」
「心配しなくとも、もうすぐ五分だ」
シャギーが言うか言わないかのうちに糸こんにゃくの製造は突然ストップし、これまで部屋を埋め尽くしていた大量の糸こんにゃくもまるで幻であったかのようにその姿を消した。流石に耳から出たこんにゃくを食べようとは思っていなかったので、大介は内心処理の手間が省けて助かったと思った。
「さぁ、では真面目な話をしよう」
「構わねーけど……ま、言うだけ言ってみろよ」
「そうさせてもらうよ」シャギーが真剣な眼差しで大介を捉える。その目からは嫌と言うほど気迫が伝わり、大介は一体どんな話をさせるのだろうかと思わず息を呑んだ。
「照子のパンツ、何色だった?」
「よし、帰れ」
不真面目な話であった。
「教えてくれてもいいじゃないか。助けたのは僕だぞ?」
「お前はスカート捲っただけだろーが!」
「そうさ! 捲ったのに照子の言技から逃れるためにパンツを見られなかった。わかるか? 捲ったのに見られないというこのやり場のない悲しみが!」
「ならもう一回捲ってお前も穴に落とされろ!」
どんな話をされるのかと心していた分、大介の怒りは大きかった。本当なら無理矢理部屋から追い出したいところなのだが、下手に触れては蛇足の標的になりかねないので罵声を浴びせるだけで堪えている。
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