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「あまりに大きな声だったので、さっきの聞こえちゃいました」
「そうか。ま、いいさ。帰ろうか照子」
「はい」
二人が階段を下りていく音が消えてしばらくすると、大家さんの改造車が爆音を上げるのが大介の耳に聞こえた。玄関の扉を少し開けると、シャギーと照子が乗っているであろう大家さんの赤いスポーツカーが闇夜に消えていくのが見えた。
日陰で虫のように生きるのが、自分の定めだと思って生きてきた。それを否定された今、日陰虫は日向へ憧れを抱かずにはいられなくなっていた。
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