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「お前は本当に話の腰を折るのが好きだな。探偵は語るのが好きなんだよ。黙ってお兄さんに語らせろ」
きずなに釘を刺してから、芦長は改めて口を開いた。
「俺が怪しいと踏んだのは“シックルズ”っつー少年ギャングだ。安易な推理で言うならシックルが直訳で“鎌”を意味しているから。それなりにまともな推理で言うなら、シックルズはリーダーの詳細が一切不明だからだ」
「そっか。もし発現者が自分と誰かの繋がりを自由に選択して切り取れるなら、不都合な繋がりは全部切るに決まってる」
「そういうことだ。誰も知らない奴を探しようもない」
枯れ気味の声で一通り話し終えた芦長は、ふぅーっと長く息を吐いた。どうやら電話の向こうで煙草を吸い始めたらしい。
「うん、ありがとう。ごめんね徹夜までさせちゃって」
「いんや、気にするな。今話した情報の入手自体には、十二分しかかかってないんでな」
十二分。それは徹夜したと言うにはあまりにも時間が短い。しかし、彼は何も嘘をついているわけではない。残りの時間、芦長は探偵としての意地とプライドでシックルズのリーダーを探り当てようと躍起になっていたのである。。
「十二分って……相変わらず凄いね」
「俺を誰だと思ってる? 名探偵・芦長十一だぞ」
言技“一を聞いて十を知る”。それが芦長の持つ言技である。ランクはきずなやシャギーと同じ“梅ノ中”。その能力は、言うまでもなく並外れた推理力と理解力。芦長は言技使用時において、僅かな情報から常人では到底たどり着けないほど深い部分の情報をも探り当てることができる。探偵事務所を営んでいるのも、この言技を生かせるからというのが大きな理由だ。
「てなわけで、俺からの話は以上だ」
「ありがとね。お金はまた今度払うから」
「お前からは金取らねーよ」
「ほら、そういうところがあしながおじさんじゃん」
「その呼び名はもっと気前のいい金持ち紳士のことを指してんだよ。何より、おじさんじゃねーし」
「はいはい。あ、そうだ。あしながお兄さんが調べてくれた“例の女の子”だけど、今から会いに行くんだー」
電話の向こうで、芦長は表情を曇らせた。煙草を灰皿に押し付け、油でべっとりとしている不衛生な頭を掻き溜息を吐く。
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