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見事なプレーを見せるも、九頭龍坂育の顔は優れない。その理由は、クラスに馴染ませることを誓った大介が今日も休んでいるからだ。ずる休みの可能性が大きいと考えているので、その怒りを今バレーボールにぶつけている。
育は二連続でアタックを決め、試合を盛り上げる。一方で試合に使っているのとは別のバレーボール二つで、男子達も大いに盛り上げていた。
育が見事な運動神経を披露する中、同じコートに立つ照子は失敗を繰り返していた。トスを上げようとして顔面にボールをぶつけたり、サーブで仲間の後頭部にボールを当ててしまったり、強烈なアタックに恐れを成して逃げてしまったりと踏んだり蹴ったり。勇ましい育とは正反対である。
そんな二人が奮闘する女子のバレーボールコートを眺めながら、会話をしている男子が二人。シャギーこと社木朱太郎と、照子にゾッコンの栗栖リオンである。
本日一限目の体育は、照子や育の属する一組とシャギーやリオンの属する二組の合同授業。体育館を二つに間仕切り、片方で女子のバレーボール、もう片方で男子のバスケットボールが行われている。
「時に社木クン」
「何かな。何だい。何だろう」
「キミは運動のできる女性とできない女性、どちらが好みカナ?」
日本生まれ日本育ちの偽帰国子女からの質問は、どう考えても育と照子のどちらが好みかという内容であった。
「そういうのはあまり気にしたことないけどなぁ」
「曖昧な答えほど男らしくないものはナイ。どちらかを答えてクレ」
「そうだな。……強いて言うならば、運動できる方がいいかな」
「フハハ! それはつまり、照子サンより九頭龍坂委員長の方がいいということダネ!」
「別にそういうわけではないんだが。だって九頭龍坂さんに限らず、女子が活発に動けば……揺れるだろう?」
リオンの青い目が、コート上で大活躍を見せている育の胸を捉える。ぶるんぶるんと揺れる様を確認したリオンは、自慢の金髪を掻き上げて「確カニ」と納得した。
「ま、活発なのに揺れない子もいるけどね。いるけどな。いるいる」
「きずなサンのことダネ。そういえば彼女、今日は休んでるらしいネ。今度は何処の誰のために頑張っているんだろうカ」
「多分、日陰虫のためだろうな」
「ヒカゲムシ?」
「何でもない」
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