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ここで一旦会話が途切れる。どうやらバレーのコートでは試合が終わったらしく、育が照子を慰めながらコートを出ていった。あからさまに男子勢が残念といった顔をしている。無論シャギーとリオンも、例に漏れない。
「時にリオン君」
「何カナ?」
「九頭龍坂さんの名前は“育”だということはご存じだろう?」
「勿論だトモ」
「それを踏まえた上で“体育”という科目名を考えると、とても卑猥に思えないか?」
「おぉゥ。アンビリーバボー!」
体育。意味は、九頭龍坂育の体。卑猥である。
「となると、保健体育なんてもう十八禁は免れナイ」
「一体どんな授業が展開されるというんだ……考えただけでエロい」
「まぁ、何だかんだ言っても、ボクは照子サン一筋だけどネ」
リオンがサラリとアイラブ照子宣言したところで、バスケットボール側も一試合終わりシャギーとリオンがコートに入った。チームは別々の敵同士。試合開始のホイッスルと同時に、ジャンプボールで味方が押し込んだボールをリオンが受け取った。金髪を靡かせ、女子から声援を浴びながら一人二人と敵を交わし、ゴール下を守っているシャギーへと迫る。
「この一対一でボクが勝ったら、照子サンは諦めてもらうヨ!」
一方的な条件を突きつけ、リオンは勢いそのままに攻撃へ出る。右に抜くと見せかけ、シャギーを引き付けてから体を回転させて左へ抜けようとする。が、シャギーはフェイントを読みリオンの道を阻んだ。
「やるネ。流石はボクのライバル」
「ライバルになったつもりはないんだが」
半ば呆れているシャギーから一瞬の隙をつき、リオンは一歩引いてシュートを放つ。僅かに遅れて跳んだシャギーだったが、右手の中指の先が少し掠めるだけに終わる。それだけではボールの勢いを殺すことができず、ゴールへと向かうボールの軌道に何ら支障は起きていない。
貰った、とリオンは早くも勝利を確信する。リオンに惚の字な女子達が決まった際の黄色い悲鳴を準備する中、弧を描き落下するバスケットボールは――ゴールに挟まった。
シュートを止めようとした際、シャギーの指先はボールを掠めていた。つまりは、一瞬であるものの触れている。ボールへ対し発現した言技“蛇足”。ゴールに挟まるボールには蛇に足の生えたぬいぐるみ・ダソ君のイエローバージョンが巻き付いていた。
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