212人が本棚に入れています
本棚に追加
「観念して照子さん。アナタのためなのよ」
「大丈夫サ。悪いようにはしないヨ」
「嫌ですっ! わ、私は大丈夫ですからっ!」
拒絶を無視し、シャギーはポーチのジッパーをゆっくりと開く。
「さぁ、始めようか」
「いやぁぁぁっ!」
平穏な昼休憩の校内に、女子高生の悲鳴が響き渡った。
◇
「オイ、見ろよあの子」
「うっわ、あんな可愛い子いたっけ?」
廊下でヒソヒソと話していた男子生徒二名は、突如足元に出現した穴に落ちて下階へと消えた。その後も同様に、廊下を進む彼女に見惚れた男子生徒達が強制落下で消えていく。それはとても異様な光景であった。
長い黒髪は赤いリボンでツインテールに結ばれ、似合ってるとは言い難かった眼鏡は外されている。気持ち程度であった化粧は育の手により本格的に施され、スカートの丈も結構なミニとなっている。スーパー照子の生誕により、学校中の男子は危機的状況に陥っていた。
「ちょっと、アンタあれどうするのよ」
「いやぁ、流石に計算外だね。計算外だよ。なはははは」
「笑ってる場合じゃないわ。何よこのカオス。照子さんが通った後には、男子が一人残らず消滅してるじゃない」
「照れ屋なところは大分解消されていると思っていたんだけど、そうでもなかったみたいだ」
シャギーが苦笑いで頬をポリポリ掻いている間にも、男子生徒の落下ラッシュは止まらない。どうやら、とんでもない怪物を生み出してしまったようであった。
そもそも、何故シャギー達は照子を無理矢理このような格好にしたのか。それには勿論明確な理由がある。ズバリ、変装だ。
照子とシャギーは、大介救出の際に鬼神の面々に顔を見られている。ならば外見を変えておいた方が多少なり安全なのではないだろうかと考えたのだ。
彼女のためだと、嫌がる照子に対し心を鬼にしてイメージチェンジを施した。真面目な委員長である育も、スカートを短くするという普段なら断固として許さない行為に目をつむってくれた。
そうして生まれたのが、スーパー照子と地獄絵図である。どうやら女子は平気のようだが、男子は周囲にいるだけでも落とされる。かくいうシャギーもかれこれ十回は落下しており、現在は距離を取って照子の後に続いているという状況だ。ちなみに、リオンはとうの昔に最下階まで落とされて失神している。
最初のコメントを投稿しよう!