―其ノ肆―

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「とりあえず、照子さんを元に戻してあげなさいよ」 「しかし、男の僕が近づくと落とされてしまうんだよ。頼めないかな?」 「ワタシだって正直近づきたくないわよ」 「これは困ったね。困ったよ。困ったな。あ、照子が教室に入ってしまうぞ」  赤面で俯いたまま、自分のクラスである一組の戸を開く。見知らぬ風貌の女子出現に、教室にいた男子達がざわめき出した。 「転校生か? 可愛くね?」 「いや違う。ありゃ村雲だ!」 「ばっ、馬鹿な! 眼鏡外すと美人なんて、都市伝説のはずだろ!?」 「照子ちゃん萌えー」 「あのツインテールで叩かれたい!」 「これぞ絶世の美! ボクの愛する村雲照子サンの真骨頂サ!」  クラスの男子オール落下。最下階で失神しているはずのリオンがいたような気がしたが、恥ずかしさで爆発しそうな照子はそんな疑問を抱く余裕すらない。 「授業始めるぞー」  教科書片手に現れた国語の男性教師が、教室への第一歩を踏み入れるなり強制下階送りとなる。最早梅ランクの所業ではない。ついに教師の犠牲者まで出てしまった。早く誰かがスーパー照子を止めないと、この地獄は終わらない。 「……致し方ない」  意を決して、シャギーが教室へと足を踏み入れる。 「本気なの社木? ……死ぬわよ?」 「僕の蒔いた種だ。それに、策がないわけじゃない」  言うと、シャギーは右手で自分の顔に触れる。彼の考える策とは、昨日大介のアパートで使ったものと同じである。言技“蛇足”による余計なものの付け足しで照子を爆笑させ、恥ずかしいという感情を吹き飛ばす。この場には残念ながら大介がいないので、言技の対象は自分自身。  鼻ゴボウだろうが耳から糸こんにゃくだろうが、スーパー照子を打破できるのなら安い代償である。覚悟を決め自身に蛇足を発現してから、赤面ツインテールへ口を開く。 「照子、僕を見ろ!」 「シャギー……イヤァァァッ!」  いつ爆発するのかと思っていた照子の頭が、ついにボンと煙を上げた。恥ずかしさは臨界点を超え、シャギーの足元に特大の大穴を出現させた。
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