―其ノ参― #2

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 しかし、ここで思いもよらぬ誤算が一つ発覚する。 「面白ェ」  相手が好戦的で、尚且つ本当に上級言技使いであった場合、脅しは安い挑発へと成り下がる。  加賀屋が右手を手前にかざすと、両脇の外壁に突如として稲妻のような亀裂が生じ、それらがボロボロと剥がれて加賀屋の手元へ吸い寄せられるように集まる。時間にして、約五秒。加賀屋の右手には、金棒を模した巨大な武器が握られていた。その全長は、二メートル近くある。 「俺の言技“鬼に金棒”のランクは“竹ノ中”。女ァ、テメェのその大層な言技ごとぶっ潰してやろうかァ?」  発現した本物の上級言技に、シャギーの表情にも焦りが生まれる。照子に至ってはもう泣き出す一歩手前である。 「どうしたァ? 余裕かまして先手は譲ってやるってかァ? なら遠慮なくいかせてもらうぜェ!」  桁外れの怪力で巨大な金棒を担ぎ上げた加賀屋は、照子とシャギーへと向かい路地裏を駆けていく。 「どっ、どどどどうするんですかっ!?」 「やむを得ないさ。括目するがいい不良共!」  かっこよく大声で叫んでから――シャギーは、思いきり照子のスカートを捲り上げた。  男の性、発動。襲いかかる加賀屋も、その手下二人も、ボロ雑巾となり蚊帳の外であった大介までもが、照子のスカートから顔を出した純白のレース付きパンティーを瞳に焼き付けた。 「イヤァァァァッ!」  そして、照子の言技“穴があったら入りたい”が発現した。  パンツを見た四人が、例外なく深い穴へと落とされる。今回の発現で照子が恥ずかしいと感じた対象は“パンツを見られた相手”なので、捲る際にきちんと目を閉じていたシャギーは言技の対象外となり落下を免れている。照子との長い付き合いがあるからこそ成せる芸当だ。  顔を両手で覆い恥ずかしさに悶えている照子を残し、シャギーは速やかに大介を穴から引きずり出した。下着を見られたのが相当恥ずかしかったらしく、穴は中々に深い。鬼神の面々は一人では当分出てこれそうにもなかった。 「テメェら覚えてろよォ! ぜってぇ痛い目合わせてやるからなァ!」  ギャングの脅しを背に受けつつ、シャギーは大介に肩を貸し照子を連れ、夜の街へと消えていった。
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