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大介の脳裏に、いつも楽しそうに笑っている赤髪で背の低い女の子の姿が蘇った。綱刈きずな。自分のような桜ランクの危険人物に対し「友達になろう」と口にした、風変わりな同級生。
「僕らもキミ同様、最初は断った。彼女が自分達といるせいで嫌われたり、時には危険に晒されるかもしれないから。キミも同じ気持ちなんじゃないか?」
何も答えずに畳を見つめる大介。シャギーはやれやれとでも言いたそうな顔をして話を続ける。
「結局僕らはきずなのしつこさに負けた。それからはきずなが皆と仲良くできるよう取り計らってくれた。人付き合いという一点において、彼女に勝る人間はいないよ。友達の作り方、苛めの辞めさせ方、喧嘩の仲直りから恋愛相談まで、人と人との付き合い方できずなの右に出るものはいない。だから、キミもきずなと友達にならざるを得ない」
ビシッと指を指され、シャギーに宣言された。確かに彼の言う通りである。きずなは実に九千回以上0から友達を作っているのだ。そして九千人以上の友達の恋愛、喧嘩、苛め、その他諸々の問題や頼みごとに首を突っ込んできた。シャギーの言う通り、人付き合いのプロフェッショナルというのは過言ではない。
そんな相手にもがいても無駄なだけかもしれない。実際に大介はきずなに惹かれているし、口では何と言おうとも一緒にいて楽しい。
それでも、受け入れられないのだ。今朝の夢が頭から離れず、その呪縛に縛られている限り、大介は一生友達も恋人も作ることができない。
「とまぁ、真面目な話というのはこれだけだ。これだけさ。これだけなのだ。僕や照子と友達になれとは言わない。だが、きずなとキミは友達になるべきだ。絶対に悪いようにはならない。では明日、その怪我では無理かもしれないが学校で待っているよ」
それを最後に、シャギーは照子が待つ外へと向かうため立ち上がる。一方的に話すだけ話された大介は、俯き黙りこくっている。シャギーが靴を履いたところで、その顔はようやく視線を上げた。
「待ってくれ、社木」
呼び止められ、シャギーは大介を見る。複雑な表情を浮かべて立つ大介は、今回の怪我とは関係なく右腕に巻いている包帯を乱暴に解き捨てた。露になるのは、火傷の痕。シャギーはそれに対し何か反応を見せることもせず、大介が次に何かするのを待っている。
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