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一方的に呼び方を指定すると、育は今度こそ大介から離れて行った。照子は「またやらかしてしまいました」と肩を竦めながら席を目指す。その頃には、担任の男性教師が出席簿片手に教室へと入ってきていた。
凄い苗字の巨乳委員長。照れ屋でとんでもない言技を使う女の子と、その子にアピールするハーフの美少年。爽やかな顔して妙な言技を使う茶髪少年に、友達九千人越えの童顔少女。
現段階でも、充実しすぎているメンツ。言技使いばかりが集まるこの学校には、おそらくまだまだ個性の強い者達が通っているのだろう。
きっと変わる。瀬野大介の学園生活は、今日から少しずつ色を取り戻していく。担任に名前を呼ばれた時、大介はいつもより大きな声で返事をした。
◇
昼休み。校舎の屋上には怪物が出現していた。
頭からは大根を生やし、顎に何かのリモコンを付け、口からは定期的にレシートが出てくる。そんな怪物の名は、瀬野大介。
晴天が広がる青空の下、照子と育が怪物大介を見て笑い転げている。何故彼がこのような辱めを受けているのかというと、その原因は一人パンを頬張っている“蛇足”の使い手、シャギーである。
お昼に誰かとご飯を食べるという、大介に言わせればいつ以来かもわからないドキドキのイベント。それに招待されたのはきずな、照子、育、そしてシャギーの四人。きずなは少し用事があり遅れるとのことである。現在屋上にいるのは大介を含み四人のみ。
校舎の屋上が定番な青春スポットであることは、大介でも知っている。そんな屋上が自分達の貸し切り状態である理由は、案の定綱刈きずなのお陰であった。
今日の昼は屋上使わないで。彼女が一言そうお願いするだけで、その内容は学校中に広まる。そして、皆がそのお願いを受け入れる。きずなの信頼度を以てすれば、実に容易いことであった。
最初からあまり人数を呼んでは大介が困るだろうということで、顔見知りだけが招集された。昼食トークの途中でシャギーが悪気はないものの大介がずる休みであることをバラしてしまい、育が怒り爆発。しかし怪我人を蹴るのは気が引けるということで、代わりとして蛇足×三回が大介に執行された。
そうして、悲しき怪物が屋上に生誕したのである。
「……三回一気にとかできたのかよお前」
「できるさ。できるよ。できるとも。まぁ、ほんの少しだけ疲れるけどね」
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