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「何で俺がこんな目に……あ、写メはやめろ村雲っ! 委員長注意しろよ!」
「今回は許すわ」
「許すなウィィィーン」
言い合いの途中で大介の口からレシートが出てきた。これには再び大きな笑いが起こる。
「どれどれ」とシャギーがレシートを取り、内容を読み上げる。
「ジャガイモ、ニンジン、タマネギ、牛肉。ふむふむ、カレーだね。カレーだよ。カレーだろう」
「知るか!」
哀れな怪物はすっかり落ち込み、膝を抱え込んでしまった。頭に大根、顎にリモコンという妙な形の影が屋上の床に映し出される。時折レシートが口から出てくるので、昼食を食べることもできない。
「そっ、そんなに落ち込まないでください瀬野君。写メは誰にも見せませんから」
「削除してはくれないんだウィィィーン」
「……ぷっ! くくっ!」
大介は五分経過するまでもう何も話さないことに決めた。せめて遅れているきずなの到着が“蛇足”の効力が切れた後になるよう祈る。しかしながら、運命とは非道なものであった。
「お待たせーっ! あははっ! オースケ何それバッカみたい!」
到着したきずなは、開口一番大介を罵り大笑いした。大介は言い返す言葉が見つからない。
「頭から大根生えてる! 顎のリモコンってそれ、何のリモコンなの?」
「知るかウィィィーン」
「あははははっ! 口からレシート出たぁー!」
ようやく友達を作れる環境を手に入れたにも関わらず、大介は人間不信に陥りそうな顔をしていた。
約一名を除いて、笑い声が溢れる昼の貸し切り屋上。その笑い声がどうにも一人分多いことに気がつくのに、そう時間はかからなかった。
「おや? そちらは誰かな。誰だい。誰だろう」
「私の新しいクラスメイトだよー。ほらっ、挨拶して」
きずなが連れてきた子に興味をそそられ、大介が暗い表情の顔を上げる。今度は一体どんな奴なのかとその姿を捉えたところで、大介の表情は驚愕に染まった。同時に“蛇足”も解け、本来の姿へと戻る。
「硯川叶です。皆さんよろしく」
包帯で顔の左側の大半を覆った少女。大介の初恋の女の子。ここにいるはずのない彼女が、どういうわけか大介の高校のセーラー服を纏い屋上に立っていた。
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