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「ガキかお前は。あー、首いてぇ……つーか、何で図書室?」
目線の先に広がるのは、何処も彼処も本ばかり。大介はまだこの学校の図書室には来たことがなかったが、知らなくても一目でここが図書室であると理解することができた。
「硯川さんがここに来たいと言ったのさ。言ったんだよ。言ったのである」
「硯川が……。そういや、小学生の頃も本が好きだったっけな」
「彼女から聞いたよ。昔の同級生なんだってね」
大介の頭に疑問が生まれた。にこにこ顔で話すシャギー。彼は一体“何処までの話”を聞いたのだろうかと。もし顔の怪我のことも聞いていたのなら、自分は怖がられるかもしれない。話を聞くだけの恐ろしさと、実際の被害者を見た恐ろしさでは比べ物にならない。
「そんな顔をするなよ」
シャギーが、困ったように笑って見せる。
「彼女からは昔の同級生以外のことは聞いていない。顔の包帯については聞いていないよ。キミと“お揃い”の包帯についてはね」
大介の肩が跳ねたので、シャギーは「正直だな」と吹き出した。
「僕はいつぞやアパートでキミが吐き出した胸の内を知っているから、大方の察しはついてるよ。多分、照子もね。追及はしないさ。でも、これだけは言っておくぞ」シャギーは、笑顔を消して言い放った。「僕達はもう友達だ。さっきキミ自身が認めたはずだろ?」
微かに震えていた肩が動きを止めた。恐怖に染まっていた大介の顔に、安堵が戻る。そうだ。そうなのだ。――これが大介が欲しくて欲しくて堪らなかった、友達というものなのだ。
「ありがとう」
「それでいい。日向へようこそ」
シャギーが大介の肩をポンと叩く。大介は笑顔で答え、長椅子から立ち上がった。
――瞬間、両肩からタケノコが飛び出した。
「お前は何度俺をダソれば気が済むんだよ社木ィィィッ!」
「油断するのが悪いのさ。悪いんだよ。悪いのだとも。おーい皆ー、タケノコの国の王子様がお目覚めだぞー」
「誰がタケノコの国の王子様だ!」
この後、二人は図書室の管理人から注意を受けることとなった。ちょうど蛇足の効果が切れた頃に解放され元いた長椅子へ戻ると、そこはきずなと叶に占領されていた。二人が並んで座り、一緒に一冊の本を読んでいる。普段は厚底靴で身長を誤魔化しているきずなも、座高までは誤魔化せない。なので、叶と並んでいる姿は中々の凹凸になっていた。
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