―其ノ陸―

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 午後六時を目前に控えた時間帯にシャギー、照子、育の三人は大介のアパートに到着した。買ってきたパーティーグッズや食べ物や飲み物の入った袋を提げ、錆びついた階段を上る。だが、家主は不在らしく鍵がかかっていた。 「困ったね。困ったよ。困った困った」 「瀬野君、まだ帰ってないんですかね?」 「買い出しをワタシ達に押し付けて、瀬野は早めに帰宅して部屋を掃除するって話だったわよね? 不在なんて許さないわ! 瀬野ー! いるなら開けなさーい!」  ノックと言うにはやや力が入り過ぎている拳で育が扉を叩く度に、年期の入った扉はミシミシと嫌な音を立てる。ノックという名の破壊が現実になるのも時間の問題かと思われたその時、施錠の外れる音と共に扉が内側から開かれた。 「やぁ、待っていましたよ照子サン」  金髪の偽帰国子女、栗栖リオンが笑顔で照子と他二名を出迎えた。これにはいち早く育がツッコミを入れる。 「何でアンタがいるのよ。呼んでないんだけど?」 「いや、たまたま偶然キミ達がパーティーをすると聞いたんでネ、先回りさせてもらったのダヨ」 「大介君は不在のようだが、どうやって入ったんだい?」 「窓が開いていたのデネ」  不法侵入である。 「帰りなさい栗栖。大家さんと警察呼ぶわよ」 「つれないことを言わないでくれよ委員長サン」 「アンタがいるとね、照子さんがパーティーを存分に楽しめないのよ」  “溢美の言”という過度な褒め言葉を扱う言技を持つリオンは、照子の天敵である。現在もこうして出会っただけで恥ずかしがってしまう始末で、シャギーの後ろに隠れて出てこない。 「いい? アンタと照子さんは“混ぜるな危険”なの」 「洗剤だね。洗剤だよ。洗剤の取り扱いには気をつけよう」 「キミ達の言い分はわかるヨ。ボクと照子サンが一緒にいると、落下の連続で下階の住民に迷惑がカカル。そうだロウ?」 「あと、単純にウザい」 「ワーオ」  あまりに率直な育の言葉に、リオンは若干肩を竦めた。 「しかし今日に限っては、落下の危険性はないと断言スル! アレを見てクレ!」  ババンと胸を張り、リオンは部屋の中を指さした。そこにあるのは、天井から垂れ下がる大きな輪っかの付いた太いロープ。リオンは不法侵入だけでは飽き足らず、ちょっとしたリフォームまで行っていた。
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