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不良達は攻撃の手を止め、照子のそれに目が釘付けとなる。しばらく何が起こったのか理解できずに固まっていた照子であったが、自分が置かれている状況を理解すると見る見るうちに顔を真っ赤に染めた。
「……はっ、恥ずかしいですっ!」
そして、言技“穴があったら入りたい”が発現。パトカーをぐるりと囲むような形で穴が出現し、不良達は文字通り一掃された。ドーナツ型に出現した穴に落ちないよう細心の注意を払いつつパトカーから降りると、照子はシャギーを責め立てた。
「ひ、酷いですシャギー! 女の子の下着を何だと思っているんですか!」
「きずな達のためなら恥ずかしいのも耐えられると言ったじゃないか。言っていたよ。言っていたとも」
「だからってホイホイ捲っていいとは言っていませんっ!」
「そう怒るなよ。僕らは紳士として、誓って見ていない。その証拠に言技の発現対象から外れているだろう?」
「そういう問題じゃありませんっ!」
二人の会話を聞いている芦長と警官は、気まずそうに頭を掻いたり咳払いをしたりしている。
「作戦の本番はここからだぞ照子。もう一度捲らねばならないから、上か下か決めておいてくれ」
「うぅっ、もうお嫁にいけない……」
「その時は僕が貰ってやるさ」
その一言で照子の頭がボンッとオーバーヒートし、シャギーは深い穴の下へと姿を消した。芦長と警官の手により引き上げられたシャギーは、服に付いた土を払いつつ照子に疑問の目を向けた。
「いきなりどうしたんだ?」
「ふっ、ふんっ。シャギーなんて知りませんっ」
「イチャイチャタイムは終了だガキ共。廃工場まで走るぞ」
芦長が会話を止め、四人は廃車となることが濃厚なパトカーと穴の底で伸びている不良達を残し駆け出した。すぐ近くで足止めを食らっていたので、距離としては百メートルもない。廃工場の敷地内に踏み込んだところで、仲間のパトカーがすでに到着していることに気づいた。
向こうのパトカーには、ギャングの集団に対抗できる術を持った者は乗車していない。一同の胸に不安が過り、駆ける足へさらに力を込めた。
朽ち果てる過程で自然に生まれた、工場外部の大きな開口。そこへ四人が飛び込んだ時、敵も味方も何一つ反応を示さなかった。まるで、工場内部だけ時が止まっているかのように誰も身動き一つ取らない。
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