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「照子がスカートを捲り上げながら突進すれば勝てると思うんだが、どうかな?」
「いい作戦ダネ! 社木クン!」
リオンが鼻血を噴出しながら親指を立てる。
「アンタらねぇ、少しは照子さんの気持ちを」
「やっ、やりますっ!」
スカートの裾をギュッと握り締め、照子がハッキリと言った。きずな達を助けるためなら恥ずかしいのも我慢するという宣言は、嘘ではないことを証明するかのように。
「なら急ごう。火の手が回る前に。委員長とリオン君は叶さんを頼むよ。行こう照子」
「はいっ!」
駆け出す二人の足は、すぐに止められることとなる。というより、止まらざるを得なかった。――真横から飛んできた二本の金棒が、目前を猛スピードで通過していったのだから。
「ひっ――!」
腰が抜けて、照子がその場にへたり込む。シャギーの驚きと恐怖で若干震えている眼が捉えたのは、こちらに気づき敵意を剥き出しにしている加賀屋であった。
「舐めた真似してんじゃねぇぞ雑魚共がァッ!」
大きな金棒が一本、加賀屋の強靭な腕から放たれる。金棒は回転しながら二人目掛けて飛んでいき、腰の抜けた照子に回避は不可能だと判断したシャギーは彼女を庇うように前に出だ。
――耳を貫くような衝撃音が響く。
ただし、それは金棒がシャギーを吹っ飛ばす音ではなく、シャギーにぶつかるより早く大介によって蹴り飛ばされた金棒が、地面を跳ねる音であった。
「大介君ッ!」
名を叫んだのは叶。そこで彼ら彼女らが叶を救出してくれたのだと気づいた大介は、安堵すると共に気を引き締めた。
「社木、皆を連れて逃げてくれ! ここは危ない」
「しかし、まだきずなが」
「綱刈は俺が助ける。約束する。――信じてくれ」
大介の目は加賀屋に向けられているため、シャギーの目には燃えている彼の背中しか見えない。燃え盛る炎がそう見せているのかは定かではないが、その背中はとても大きく、頼りがいのあるように見えた。
どのみち、照子はもう言技を使うことができそうになかった。かつてシャギーは、照子の言技発現の元である“恥ずかしさ”を“笑い”という別の感情で掻き消し、“穴があったら入りたい”の発現を防いだことがある。
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