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 社員食堂は戦場。1分、いや、1秒でも早くカウンターに並びトレーを取る。棚に並べられたご馳走を食べるだけ取る。最後に会計をしながら横目で空席を探してアタリをつける。お釣りをもらった瞬間、その席へとダッシュする。普段はお弁当を持参するから滅多には来ない場所。だからなおのこと緊張する。  狙うは中央の2名席、ガヤガヤするけど相席も頼まれずに済む。 「あ!」  わずか1秒の差だった。右から入ろうとした私の前に、左からトレーを流した人がいた。トレーを支える手に見えたのは濃紺のスーツの袖口……男性だ。 「あーあ。満席みたいだね。お気の毒に」  私も辺りを見回す。その男性社員が言うとおり満席。鼻を鳴らす音が聞こえて思わず見上げる。知らない社員だ。   「相席、させてやってもいいけど?」 「させ……?」  私は眉がピクリとした。同じ会社の社員とは言え、初対面の人間に見下される覚えはない。仮にあったにせよ、鼻を鳴らすとは言語道断だ。そんな私の気持ちを察知したのか男は更に片方の口角だけを上げて笑った。 「嫌なら、あっちの上役のところに行けば?」  男が顎でしゃくった先はバーコードの部長課長連中。その中に彼もいた。私と目があった上役が手招きをする。どうせセクハラ紛いの会話に付き合わされるのがオチだし、彼の前でバレないように立ち回る自信もない。それにノコノコ彼の前に行ったら昨夜のコトを許すことになる気がして癪だった。再び私は男を見上げた。
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