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「あ……相席お願いします」 「声が小さい」 「お。お願いします!」 「じゃあ、いいよ。不倫やめるなら」 「ありがとうござ……え、ええ??」  私は目をまあるくしてたと思う。そんな私を見下ろしてクスクスと笑った。 「不倫やめないなら相席させねえ」 「ちょっと何でそんなこと。だいたい初対面で」 「へえ。認めるんだ」 「あ」  私は思わず息を短く吸い込んで止めた。カマを掛けられた。男は……奴は今度は肩をふるわせて笑いを堪えている。 「星野課長、俺の上役。直属上司」 「あっそ」 「いやあ、俺って勘がいいんだよねー。やっぱりそうなんだ。バラしちゃおっかなあ」 「や、やめてください」 「じゃあ頂戴」 「なにを」 「名刺、君の」  私は渋々名刺入れから一枚取り出した。社名、部署名、氏名、会社の住所、ホームページアドレス、私の携帯番号。
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