部員活動記録抜粋①

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事の発端は、入学初日に予知部顧問のジェシー模糊実(もこみ)から「パンツを脱げっ」と言われた時から全てが始まった。  現在、予知部員2名+1名はその発言についてあらゆる思考を働かせているに違いない。  春、高校入学初日に俺を含めたこの3名がここ保健体育準備室(ほけんたいいくじゅんびしつ)に集ったのには訳がある。  入学案内が一通り終わりさぁ帰るかと脚を踏み出した瞬間、俺の前に現れたのは一体のオカマだった。  何故、目の前の生き物がオカマだと解ったかには理由があった。  ロングスカートを履いているからである。しかも、身体がゴツいのである。  現代人が一目見てコイツはオカマだと思うシチュエーションは大雑把に分けて二つ。  一つは、パット見は明らかに女性の姿をしているが実際には整形を繰り返して作り上げた容姿を見にまとっただけの作り物のオカマ。  そしてもう一つは、女装はしているが明らかに女性ではあり得ない体格をした挙げ句、その容姿を周囲に堂々と晒す事が出来てしまえるガチのオカマ。  今回のケースは後者だと俺は思った。  なので、この果てしなく広がった広大な大胸筋をピクつかせて歩く生き物がオカマであると判断するに至ったのだ。  髪型は、タテ巻きのロールを左右にユサユサさせている。  服は、この時期にしてはヤケに薄地のキャミソールである。見た目からして、サイズはXL以上と俺の思考は判断していた。  こんなときに考えるのは野暮だろうけど、一応これだけは訊いてみたくなって言った第一声は目の前の生き物に対して失礼きわまりないものだったに違いない。 「あのっ、下着はどちらのものを履いてるんですか?」  余りに突然すぎて一瞬自分が何を言ったのかさえも考えるのが遅れるくらい俺は動揺していたに違いない。しかし、言ってしまった以上後戻りは出来ないのが世の常である。しかし、目の前のオカマは俺の常識を遥かに越える破壊力でこう答えた。 「下着……いやだわこの子発情期かしら。」  俺は悟った。 ――もう、死ねばいいのに……。
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