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それを見て、晋也はわざとらしく溜め息を付くと、「お前馬鹿か?」とたらおに向かい鼻で笑った。
「俺等は魔力者なんだぜ?んなことしなくても、持ってる魔法でどうにかしていけば、仕事なんてしなくて良いだろ。大体、世界の治安を守ってやってるのに、何で世の中の道理に合わせなきゃいけないんだよ!」
晋也の発言に、たらおは一瞬眉をピクリと動かした。謎野は黙ったまま、格闘ゲームの攻略本に読みふけり、高城は口をポカンと開けたまま、晋也の話を聞いていた。
「…確かに、君の言いたいことは分かる。だけど、その考え方は、身の破滅を呼び起こすよ」
「どういう意味だよ?」
「この世界にはこの世界のルールってものがあるだろ。それを魔力に取り憑かれ、何でも暴力で解決しようとすれば、やがて自身の考えに固執し始めて、気が付けば君は一人になる。そうなれば、孤独になった魔力者は、いつの間にか自分がその結果を呼び起こしたにも関わらず、それを人のせいにして、気が付けば良太郎みたいな破壊と殺戮だけしか能のない魔力者の完成さ。
忘れないことだね。魔力を持っているからって、決して僕等は『特別』なワケじゃないんだ」
そう言って、たらおは屋上の扉をガチャンと閉めた。同時に昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴り、謎野も攻略本を閉じて、教室へと戻って行った。
一人残された晋也は、とてつもない虚無感に襲われた。
まるで、自分が世界の中で独りぼっちになってしまったような感覚。そして、たらおの言葉に対してどうしよもない悔しさと、自分自身の考え方の情けなさと、それでも納得出来ないという憤り。
様々な感情が晋也の心の中をぐるぐると渦巻いて、自分でも何が何なのか訳が分からなくなっていた。
「くそ…」
地に視線を落とし、小さく呟いた晋也の後ろで、高城が目をまん丸くしながら、二人のその光景を見つめていた。
「就活かぁ~…。俺、パン屋になろうかなぁ」
「何でだよ」
突拍子もない高城の発言に、晋也の苛立ちは更に増し、晋也はその苛立ちをまばたきを果てしなく高速ですることにより現した。
放課後。生徒会室。
副生徒会長は、いつものように、海岸端高等学校にとって一番の草案をまとめ、会議でそれを提出する。その案に誰もが感動し、賛成の意見が飛び交う中、生徒会長・宮原大地のところまでそれが来ると、その書類は破って捨てられた。
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