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その意味。お前は理解できるよな?」
「あぁ…」
大地が頷き、男は声高々に笑い始めた。本当に楽しそうに。そして嬉しそうに。
「『あぁ』だってよ!そりゃそうだ!!
だって、お前は元々傍観者!どんな事が起きようが、手を出すことは許されねえ。ところがどうだ。蓋を開けりゃ、歴史を紡ぐ『だけ』が仕事の筈のお前が、率先だって世界を守りに来ていやがる。
いよいよ、世界も終末って訳だな。おい!」
男は、そう笑いながら、大地に指を差す。表情を崩さない大地に、男は声を張り上げた。
「良いか。賭けに負けたお前は、この先何も出来ないし、何もしちゃならねぇ。
あの時、この俺様に賭けを『提案した』ことを、お前は未来永劫後悔し続けるのさ!」
「安心しろ。俺は何もしない」
「そう!それで良い。それで良いんだ!!」
大地の返答に哄笑を続けながら、男はその場から空気に溶けるように消えていった。
「…まぁ、『俺は』だけどなー…」
大地も、それだけ言い残し、すぅと空気に溶けて消えていった。
『海岸端高等学校・就職内定率100%』
そんな段幕が、朝から校舎にでかでかと掛けられていて、生徒達はそれが嘘だとすぐに見破った。
このご時世。一流大学を卒業した者ですら、就職は難しいと世間は嘆くというのに、こんな何の変哲もない高校が就職内定率100%なワケがない。
どうして大人はこんな下らない見栄を張るのだろう。
就職活動に明け暮れる不安いっぱいの生徒達は、朝の太陽に照らされ、燦々と輝く段幕に目を向けながら、大きな溜め息を着いた。
そんな中、その段幕を真摯に受け止め、心から信じる者が居た。
村上晋也その人である。
晋也は、段幕を見るなり、拳を握り締め、大きくガッツポーズをし、まだ求人票すら見ていないのに、自分は就職できると安心しきっていた。
「お前、まさかとは思うけど、あれを信じちゃいないよな?」
晋也の後ろを歩くつぶらやモンキーズが心配そうにそう言うと、晋也が驚愕した面持ちでモンキーの方を振り返った。
「違うのか!?」
「当たり前だ!!」
質問に即答された晋也は、あまりのショックに開いた口が塞がらなかった。それでも、まだ信じれないという表情で、モンキーに話し掛ける。
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