困難を極める就職活動

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村上晋也。海岸端高等学校三年生。福祉科在学中。 坊主頭に四角い顔の、細い目と太い唇が特徴の、恋多き(片思い中心)学生である。 彼は今、某学校の体育館で開かれている生徒集会を、目をまん丸くしながら体育座りして、生徒会長の話を聞いていた。 「まぁ、ようするにだ。この学校は既に俺の手の中にあり、貴様等はこの俺の下僕という訳だ。だから、大人しく貴様等もこの俺に従うように!」 生徒達の目の前の壇上でそう言った男は、長髪に眼鏡を掛け、顔だけ見ると知的な印象を受けた。しかし、顔から下の格好がその印象を一気に忘れさせてくれる。 「おいおい。今日も大地の奴、上半身裸だぜ?寒くねーのかな」 「…寒さの前に色々と問題がー…。って言うなって!奴に聞こえたら、また上靴投げられっぞ」 晋也が驚愕する前で、そうペチャクチャと喋っているのは、つぶらやモンキーと謎野少年である。少年とは、列記とした意味のある名前であり、決して親がノリで付けたというワケではない。 「いやでもよ。あれで自分格好良いと思ってるとか、マジ終わってね?」 「おい!謎野!!後ろ、後ろーッッ!!」 「へ?」 謎野が大地の陰口に夢中になっていると、大地は謎野の『それ』に気付いたようで、瞬間上靴を物凄い勢いで投げてきた。謎野と向かい合って立っていたモンキーは、それをしっかりと目撃していたようで、謎野にそれを報せるも、時既に遅し。謎野のこめかみに、見事上靴は命中した。 「ぐはっ…!」 こめかみに上靴が命中したと同時に、地に伏せた謎野は、そのまま白目となって泡を吹いた。 「なんて恐ろしい奴だ。宮原大地ー…」 そんな謎野を見下ろしながら、身を震わせるモンキーの後ろで、晋也は二人のこととは『別の理由』で、ずっと驚愕していた。 ところ変わって三年一組教室。 ここは、福祉科の教室である。無論、晋也の教室でもある。 「あー…なんだ」 生徒集会が終わり、皆が教室に戻り、気怠そうに担任のホームルームを受ける中、村上晋也だけは目を見開き、生徒集会の時と同じ様に驚愕していた。 そんな晋也の驚愕ぶりなど知らない担任は、徐(おもむろ)にチョークを取り出すと、『就活』と黒板に書き始めた。 「お前等、そろそろ就活始めとけー」
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