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その言葉に生徒達が微弱ながら反応する。そして、晋也が目を見開いたまま驚愕する中、一人の生徒が質問した。
「郷田先生。この前の校内就職選考の結果は、まだ貼り出さないんですか?」
晋也は、その生徒の言葉を聞いて、更に焦った。
(え!?俺も就職希望なのに、校内選考なんて知らないけど!!)
そんな晋也の想いを後目(しりめ)に、郷田と呼ばれた教諭が「忘れてたな」と呟きながら、後ろの掲示板に白い紙を貼り始めた。
両眼視力3.0という脅威の視力を有する晋也は、校内選考を受けていないので、自分の名前が掲載されている筈はないと解っていても、もしかしたら自分の名前が載っているのではないかという期待を込めて、気が付けば一生懸命探していた。
謎野少年や丸山たらおの文字を確認する中、高城進の文字も発見したのにも関わらず、村上晋也の文字は一向に見渡らない。
高城進よりは、頭が良いと自負していた晋也は、自分が校内選考を受けていない事実を忘れ、頭の中がパニックになり、更に下位の文字の羅列に視線を落とす。そして、最下位にまで視線を落としたその下に、村上晋也の文字は踊っていた。
『論外・村上晋也』という文字と一緒にー…。
「どういうことだぁあぁーッッ!!」
ところ変わって昼休みの海岸端高等学校屋上。
晋也は、屋上のフェンスに何度も頭をぶつけながら、雄叫びを挙げていた。
「どういうことだ、どういうことだ、どういうことだぁあぁーッッ!!」
その光景を見ても、晋也の行動を止めることはないあと二人は、優雅に欠伸をしながら昼食のジャムパンを食べていた。
「大地のヤツ、普通に生徒会長として演説していたぞ!郷田のヤツ、普通にホームルームとかして、しかも就活とか言い始めたぞ!」
「うっせぇなぁ!まぁ、落ち着けよ」
「これが落ち着いてられるかぁーッッ!!」
スキンヘッドの学生が、片手に格闘ゲームの攻略本に目を通しながら晋也に向かい愚痴ると、晋也はスキンヘッドの学生の胸倉を掴み、叫び散らした。
「大体お前!えらく格好付けて、大地は俺が倒すとか言ってたくせに、普通に生きてるじゃねぇか!それに郷田も居るし!!
一体、何がどうなってるんだ!説明しろ、説明ぃいぃ!!」
興奮する晋也は、謎野と呼んだ学生に、これでもかというぐらい顔を近付けると、そう叫んだ。
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